第1章 家を持つということ
第1話 18歳の私が忘れられなかった家のドラマ
18歳。
大学1年生だった私は、1つのテレビドラマに夢中になった。
TBSテレビで放送された「それでも家を買いました」。
きっかけは、とてもシンプルだった。
主演が、私の好きな俳優だった三上博史さんと田中美佐子さんだったのである。
「ちょっと見てみよう。」
そんな軽い気持ちで見始めた第1話。

しかし、放送が終わる頃には、そのドラマの世界にすっかり引き込まれていた。
毎週、この続きを見たい。
そう思ったのを、今でも覚えている。
当時の私は、そのドラマが30年以上経った今でも心に残り続けるとは、もちろん想像もしていなかった。
当時の私は、実家で暮らす大学1年生だった。
将来について深く考えることもなく、目の前の学生生活を送っていた。
家を買う。
家を建てる。
そんなことは、自分とはまだ遠い未来の話だった。
住宅ローンという言葉は知っていても、その意味は分からない。
家族を持つことも、家を守る責任も、想像すらしていなかった。
それでも、そのドラマには不思議な魅力があった。
登場人物たちは、家という1つの夢に向かって悩み、迷い、ときには立ち止まりながら前へ進んでいく。
私は毎週、その物語を楽しみにテレビの前に座っていた。
「来週はどうなるんだろう。」
そんな1週間を過ごすのが楽しみだった。
細かなストーリーは、もう記憶の中で少しずつ薄れている。
どんなセリフだったのか。
どんな場面で感動したのか。
そこまでは思い出せない。
でも、1つだけ確かなことがある。
あのドラマは、18歳だった私の心に、「家」という存在を深く刻み込んだ。
それは、建物としての家ではなかった。
人が帰る場所。
家族が暮らす場所。
人生を積み重ねていく場所。
そんな温もりを感じさせてくれる存在だった。
その頃の私は、まさか自分が将来、家づくりにこれほど心を動かされる人生を歩むとは思ってもいなかった。
だから、このドラマを見終えたあとも、「家を建てたい」と考えたわけではない。
ただ、「いいドラマだった。」
そんな感想を胸に、日常へ戻っていった。
しかし、人の人生には、不思議な出来事がある。
そのときは何気なく過ぎていった出来事が、何年も、何十年も経ってから、「あれが始まりだった」と気づく瞬間がある。
私にとって、それが18歳の春に出会った1本のドラマだった。
あの日、小さく蒔かれた1粒の種は、まだ芽を出すことなく、静かに心の奥で眠り続けていた。
次回予告
第2話 家を買うことは、何かをあきらめること
18歳の私には理解できなかった、ドラマのもう1つのメッセージ。
「家を持つ」ということは、夢をかなえることだけではありませんでした。
30年以上の時を経て、その意味を少しずつ理解していくことになります。

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