第12話 駅から2分、冬には陽が当たらない土地
ノートに住みたい街や予算を書き出してから、私の土地探しは、さらに具体的になっていった。
毎日のようにSUUMOを開き、条件に合う土地が出ていないかを確認する。
希望していた街であること。
駅から近いこと。
生活に便利なこと。
将来も価値が残りそうなこと。
そして、自分自身がそこで暮らしたいと思えること。
そんな条件を重ねながら探していると、気になる土地が見つかった。
最寄り駅から徒歩2分。
大阪市内の中心部で暮らしたいと考えていた私にとって、その近さは大きな魅力だった。
駅を出てから、ほとんど歩かずに家へ帰ることができる。
雨の日も、荷物が多い日も負担が少ない。
将来、年齢を重ねたときにも、駅に近いことは大きな価値になる。
「ようやく条件に合う土地が見つかったかもしれない。」
そう思った。
掲載されてから、すでに時間がたっていた。
不動産会社へ問い合わせると、購入の話がかなり進んでいる人がいて、そのあとにも待っている人がいると聞いた。
迷っている時間は、それほどないのかもしれなかった。
しかし、説明を聞く中で、気になることが2つあった。
まず1つは、日当たりだった。
土地の南側に、大型高層マンションが建っていたのである。
不動産会社の話では、夏は太陽が高い位置を通るため、かろうじて陽が当たるという。
けれど、冬になると、ほとんど陽が当たらない可能性が高いという。
駅から2分。
希望していた街。
条件だけを並べれば、簡単には出会えない土地だった。
それでも、「日が当たらない」という言葉が心に残った。
家の中が暗くならないだろうか。
冬は寒く感じないだろうか。
洗濯物は乾くだろうか。
毎日暮らしていく中で、日当たりを我慢し続けることにならないだろうか。
もう1つ気になったのは、道幅だった。
土地の前の道幅は2メートルほどしかなく、車の乗り入れができない。

車を持たない暮らしは、考え方を変えれば受け入れられるかもしれない。
土地が広くなくても、間取りを工夫できるかもしれない。
しかし、陽の光だけは、自分の努力で増やすことができない。
私は、駅からの近さと日当たりを、頭の中で何度も比べた。
利便性を優先するのか。
毎日の暮らしやすさを優先するのか。
どちらにも、簡単な答えはなかった。
土地は、数字や条件だけで選ぶものではない。
駅から何分か。
面積はいくらか。
価格はいくらか。
それらは、もちろん大切である。
けれど、実際にそこで暮らしたとき、朝どんな光が入り、冬の部屋でどのように過ごすのか。
物件情報には書かれていない暮らしまで想像しなければ、本当の答えは見えてこない。
駅から2分という魅力的な言葉の前で、私は初めて立ち止まった。
条件に合う土地を見つけることと、そこで幸せに暮らせることは、同じではなかった。
その土地は、私に最初の問いを投げかけていた。
次回予告
第13話 土地2,980万円、総額5,500万円
土地の価格は、予算の範囲に入っているように見えた。
しかし、家を建てるために必要なのは、土地代だけではない。
建物の費用。
さまざまな諸経費。
不動産会社から伝えられた総額を前に、私は大阪市内中心部で家を建てる現実を知ることになる。

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