51歳、それでも。第7話 51歳、もう一度家を探し始める

第7話 51歳、もう一度家を探し始める

「もう1軒一戸建てを持ちたい。」

その夢は、少しずつ現実味を帯び始めていた。

子どもたちは大学生になり、あと数年で社会人になる。

住宅ローンの残高も、少しずつ減ってきた。

積み重ねてきた知識や経験も、自分の中で確かな自信へと変わり始めていた。

そして、51歳。

私はもう1度、家を探し始めた。

毎朝、出勤前にSUUMOを開く。

昼休みにも物件を眺める。

夜、家族が寝静まったあとも、新着物件を確認する。

気づけば、1日に何度もSUUMOを開いていた。

それは、まるで30代前半の頃に初めて家を探したときと同じだった。

いや、それ以上だったかもしれない。

毎日が楽しかった。

新しい物件が掲載されるたびに胸が高鳴る。

「この家はどうだろう。」

「立地は申し分ない。」

「将来、貸すことはできるだろうか。」

そんなことばかり考えていた。

もちろん、現実は甘くない。

住宅価格は年々上がっている。

建築費も高騰している。

金利も、いつ上がるかわからない。

51歳という年齢で、新たに住宅ローンを組むことに不安がないと言えば嘘になる。

「今さら家を買うの?」

「もう十分じゃない?」

そんな声が聞こえてきても不思議ではなかった。

実際、妻も最初は驚いていた。

「また家を探してるの?」

笑いながら、そう言われたことを今でも覚えている。

それでも、私の気持ちは変わらなかった。

今回の家探しは、ただ住む家を探しているわけではない。

未来の暮らし。

未来の資産。

そして、60歳以降の人生。

そのすべてを見据えた家探しだった。

住むこともできる。

貸すこともできる。

売ることもできる。

そんな柔軟な選択肢を持てる家を探したかった。

毎日のように物件情報を眺める中で、少しずつ自分の理想が見えてきた。

駅から近いこと。

生活しやすい環境であること。

将来も資産価値が期待できること。

そして何より、

自分自身が「ここに住みたい」と思える家であること。

投資だからといって、数字だけで選びたくはなかった。

自分が住みたいと思えない家を、人に貸したいとも思えなかった。

家は、人生そのものだからだ。

だから私は、毎週のように現地へ足を運んだ。

駅から歩く。

周辺を散策する。

昼の街並みを見る。

夜の雰囲気も確かめる。

平日と休日では、人の流れも違う。

スーパーや病院、学校、公園、商店街。生活のすべてが揃っているか、自分の足で確かめたかった。地図だけではわからない空気を感じたかったのだ。

気になる物件が見つかっても、すぐには決めない。

もう1度見に行く。

時間帯を変えて歩く。

雨の日にも訪れる。

納得できるまで確認する。

家は、人生で何度も買うものではない。

だからこそ、自分の目で確かめることを大切にした。

そんな毎日が、私は楽しくて仕方がなかった。

51歳。

世間では、人生の後半戦と言われる年齢かもしれない。

でも、私にとっては違った。

もう1度、自分の人生が動き始めた瞬間だった。

次回予告

第8話 ハザードマップを開いた夜

理想の家が見つかっても、それだけでは決められなかった。

本当に安心して暮らせる場所なのか。

将来、資産として守れる場所なのか。

その答えを探すため、私はある夜、1枚の地図を開いた。

それは、ハザードマップだった。

その夜から、私の家選びの基準は大きく変わり始める。

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