第14話 40メートル後退する駐車場
大阪市中心部の駅から徒歩2分の土地は、総額5,500万円という現実を知り、見送ることになった。
それでも、家探しをやめようとは思わなかった。
大阪市中心部の周辺の街であれば、条件に合う土地があるのではないか。
そう考え、私は別の物件を探し始めた。
しばらくして、気になる土地を見つけた。
駅から徒歩3分。
土地は約60㎡。
土地価格は2,280万円。
建物価格は2,200万円。
土地と建物を合わせても、前に検討した物件より費用を抑えられそうだった。
「これなら、現実的に考えられるかもしれない。」
私は、不動産会社へ問い合わせを入れた。
資料を見るだけでは分からないことがある。
だから、できるだけ現地を見るようにしていた。
実際にその場所へ足を運ぶと、周辺の街並みは落ち着いた住宅地だった。
駅からも近い。
価格も現実的に感じられた。
「この物件はどうだろう。」
そんな期待を持ちながら、周囲を歩いてみた。
そして、駐車場までの道を見た。
車を止める場所は、道路の奥にあった。
そこへ入るには、約40メートルをバックで進まなければならないという説明を受けた。
私はその道を見つめた。
約40メートル。

数字だけを見ると、それほど長く感じないかもしれない。
しかし、実際にその場へ立つと、印象は違った。
毎日車を出し入れするたびに、約40メートルを後退する。
雨の日もある。
夜もある。
歩行者が通ることもある。
私には、その駐車方法が日常になる姿を思い描くことができなかった。
駅から近い。
価格も魅力がある。
それでも、毎日の暮らしを考えたとき、この駐車場は簡単には受け入れられなかった。
家は、何十年も暮らす場所である。
だからこそ、毎日繰り返すことになる動作も、大切な判断材料になる。
私は、この土地を見送ることにした。
理想の条件に近づいたと思っても、新しい課題が見つかる。
家探しとは、その繰り返しだった。
それでも、不思議と焦りはなかった。
むしろ、条件を1つずつ確かめていくことで、自分が本当に譲れないものが何なのか、少しずつはっきりしていくような感覚があった。
納得できる土地に出会うまで探そう。
その気持ちは、変わることがなかった。
次回予告
第15話 引っ越す意味が見つからなかった
さらに候補を探す中で、私は別の街にも足を運んだ。
駅から近く、条件も悪くない。
それでも街を歩いているうちに、ある思いが頭から離れなくなった。
「本当に、ここへ引っ越す意味があるのだろうか。」

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