第2章 住む街を探す
第11話 夢が、具体的な計画に変わった
給与明細を閉じたあとも、私の頭に浮かんでいたのは、やはり家のことだった。
「もう一度、家を建てたい。」
最初は、漠然とした思いだった。
誰かに話すわけでもなく、心の中で温め続けていた小さな夢。
毎日のようにSUUMOを開き、街を歩き、地価公示マップを眺める。
そんな時間が、私にとっては何より楽しかった。
しかし、ある日、ふと気づいた。
私はもう、夢を眺めているだけではなかった。
夢を実現するための準備を始めていたのである。
まず考えたのは、資金計画だった。
住宅ローンはいくらまで借りられるのか。
毎月の返済額はいくらなら無理がないのか。

退職後の生活に支障はないのか。
そして、不動産賃貸業との両立はできるのか。
頭の中にあった思いを、一つひとつ数字へ置き換えていった。
夢は、数字になった瞬間から、計画へと変わり始める。
次に考えたのは、住む街だった。
駅からの距離。
生活の利便性。
将来の資産価値。
災害リスク。
そして何より、自分自身が「ここで暮らしたい」と思える場所であること。
以前の私は、「家」を探していた。
でも、この頃の私は違っていた。
探していたのは、「これからの人生を過ごす場所」だった。
五十代で家を建てる意味は、三十代の頃とは違う。
子育てのためでもない。
見栄のためでもない。
これから先の二十年、三十年を、自分らしく安心して暮らすための住まいを探していた。
だからこそ、焦る必要はなかった。
妥協する必要もなかった。
時間をかけて、本当に納得できる選択をしたい。
そう思っていた。
振り返れば、第1章で積み重ねてきた経験は、すべてこの瞬間につながっていたように思う。
資格の勉強。
二百冊を超える読書。
投資の経験。
不動産賃貸業への準備。
街を歩き続けた時間。
その一つひとつが、「いつか叶えたい夢」を、「具体的な計画」へと少しずつ変えてくれていた。
私はノートを開き、住みたい街や予算、将来の暮らし方を書き出し始めた。
心の中にあるだけの夢は、いつまでも夢のままだ。
けれど、紙に書き、数字に置き換えたとき、それはもう夢ではなくなっていた。
一つひとつの選択肢に根拠が生まれ、迷いの中にも輪郭が見えてくる。
それが、計画というものなのだと思う。
あの日、私はようやく、夢を追いかけるだけの人ではなくなった。
夢を、具体的な計画へと変えるための一歩を踏み出していた。
次回予告
第12話 駅から二分、冬には陽が当たらない土地
駅から徒歩二分。
ようやく条件に合う土地を見つけた。
立地も、価格も、これ以上ないほど条件に合っていた。
それでも、何かが引っかかっていた。
だから私は、何度も現地へ足を運んだ。
家は、図面や数字だけでは選べない。
実際にその場所に立って、初めて見えてくるものがある。
そして、その土地には、二つ気になることがあった。

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