第15話 引っ越す意味が見つからなかった
40メートルをバックで駐車しなければならない土地を見送り、私は再び物件探しを続けた。
家探しは、思っていた以上に時間がかかる。
条件に合う土地を見つけても、実際に現地へ行くと、資料だけでは分からないことが見えてくる。
そんな中、また新しい候補が見つかった。
駅から近く、価格も現実的だった。
「今度こそ、良い出会いがあるかもしれない。」
そう思いながら、私は現地へ向かった。
駅を降りて街を歩き始める。
住宅街が広がり、生活に必要な店もそろっている。
落ち着いた雰囲気で、暮らしやすそうな街だった。
しばらく歩いているうちに、あることに気づいた。
「どこか見覚えがある。」
もちろん、初めて訪れた街である。
それなのに、不思議と新鮮さを感じなかった。
街並みを見ながら歩いていると、今住んでいる街の景色と重なって見えた。
駅までの距離。
住宅街の雰囲気。
普段の暮らしのイメージ。
どれも大きな違いを感じなかった。
私は歩きながら、自分に問いかけた。
「本当に、ここへ引っ越す意味があるのだろうか。」
家を建てたい。
その気持ちは変わらない。
しかし、家を建てることと、街を変えることは別の話だった。
住宅ローンを組み、多くのお金をかけて新しい家を建てる。
それだけの決断をするのであれば、暮らしも大きく変わる場所であってほしい。
私が求めていたのは、新しい家だけではなかった。
新しい暮らしでもあった。1度しかない人生なのでいままでの生活から少しでも発展したい。
その街には、不満は何もなかった。
だからこそ、引っ越す理由も見つからなかった。
条件が悪いからではない。
街が嫌いだからでもない。
ただ、今の暮らしと比べて、「ここでなければならない理由」が見つからなかったのである。
私は、その街をあとにした。
条件を1つずつ確かめていけば、答えに近づけると思っていた。
しかし、条件が整っているだけでは、心は動かないこともあると知った。
家探しとは、条件の良い土地を探すことだけではない。
自分が、どんな暮らしを望んでいるのかを知ることでもある。
この日、私はまた一つ、自分の中の基準に気づくことができた。
次回予告
第16話 築25年の家に移るという選択
新築だけが選択肢ではない。
そう考えた私は、中古住宅にも目を向け始めた。
築25年。
その一戸建てが、私の目に留まった。

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