第4話 最初の家を建てる
結婚し、家族が増えた。
子どもたちの成長を見ながら暮らす中で、私たちは少しずつ「自分たちの家を持ちたい」と考えるようになった。
家を探し始めるにあたって、最初に決めたのはエリアだった。
当時住んでいた賃貸マンションの周辺は、とても住み心地が良かった。
買い物にも便利で、生活しやすい。
そして何より、私の実家にも近かった。
家そのものは、いつか建て替えることができる。
しかし、「どこに住むか」は簡単には変えられない。
だから私は、「この街で暮らしたい」という思いを大切にした。
次に考えたのは、マンションではなく一戸建てにすることだった。
私自身が一戸建てで育ったこともあり、一戸建てには自然と親しみがあった。
そして何より、土地を持つことには大きな意味があると考えていた。
将来、建て替えることもできる。
駐車場として活用することもできる。
建物だけでなく、土地そのものが持つ可能性に惹かれていた。
条件を決めると、近所の不動産会社を5軒以上回り、希望を伝えた。
「条件に合う物件が出たら教えてください。」
そうお願いして、連絡を待つ日々が始まった。
しかし、思うようにはいかなかった。
1年。
2年。
待っても、希望するエリアには納得できる物件はほとんど出てこなかった。
もちろん、候補がまったくなかったわけではない。
「ここなら悪くはない。」
そう思える物件は何度か紹介された。
けれど、私の中では「理想の半分くらい」という印象だった。
この先何十年も暮らす家になる。
そう考えると、どうしても決断することができなかった。
焦って買うより、本当に納得できる一軒を待とう。
そう決めて、見送ることを繰り返した。
そして、ようやくその日が訪れる。
紹介された一軒は、それまで待ち続けた時間が報われたと思える物件だった。
何より、私たちが暮らしたいと思っていた、その街に建つ家だった。
土地は69.61㎡。
大阪市内の都心に近いこのエリアでは比較的大きな土地だった。
建物は119.04㎡の鉄骨造3階建て。
車庫があり、家の前だけでなく後方にも道路が通っていた。
1階の裏手には小さな庭があり、家庭菜園も楽しめる。
3階にはウォークインクローゼットとスカイバルコニー。
最寄り駅までは徒歩7分。
土地価格は2,000万円、建物価格は1,700万円。
私たちが思い描いていた暮らしに、限りなく近い家だった。
「この家にしよう。」
1〜2年待ち続けた時間が、その一言に詰まっていた。
あのとき妥協しなくて、本当に良かった。
今振り返っても、そう思う。

そして、この家で暮らし始めた。
そのときの私は、まだ知らない。
この家が、私にもう1つの夢を見せてくれることを。
次回予告
第5話 二つの家を持つという、もう一つの夢
最初の家を手に入れたことで、私たちの暮らしは大きく変わりました。
そして、その暮らしの中で、私の心には新しい夢が芽生えます。
「家を持つ夢」を叶えたはずなのに、なぜ私は「もう一つの家」を思い描くようになったのか。
その答えは、最初の家で過ごした日々の中にありました。

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